都市計画〜地域活性化の為にやらねばならない事とは:倉敷の実情を知る〜

        

              戸田奈沙

はじめに

私はこれまで横浜と倉敷の都市計画について調べてきた。今回、今まで調べた事を踏まえた上で、さらに倉敷について研究し、ひとつの都市を詳しく調べる事で、地域活性化の為にやるべき事を探り出したいと思う。

 

倉敷データ

倉敷・・・岡山県倉敷市

     面積 298.00平方キロメートル

     項目別土地面積 

人口動態(略)

人口の推移(略)

年齢別人口構成(略)

 

都市計画の基本理念

  都市計画の基本理念は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、健康で文化的な都市生活と機能的な都市活動を確保することと、そのために土地の合理的な利用を図ることである。    (都市計画法第2条)

都市計画の種類

1.市街化区域及び市街化調整区域の線引き並びに地域地区による土地利用に関する計画

2.道路、公園等の都市施設に関する計画

3.土地区画整理事業・市街地再開発事業等の市街地開発に関する計画

4.促進区域・市街地開発事業等予定区域の事業を円滑に進めるための計画

5.地区計画等の地区特性に応じて計画的な市街地整備を進めるための計画

6.市街地の低未利用地の有効・適切な利用を図り、都市機能の増進を促進するための遊休土地転換利用促進地区に関する計画

    

都市計画の歴史

日本で都市計画法が定められたのは大正8年である。倉敷は昭和3年に都市計画法適用都市の指定を受ける。昭和39年1月に岡山、倉敷両市を中心とする7市20町6村が岡山県南地区新産業都市の指定を受けたことにより、広域的な都市計画が必要になる。昭和44年6月14日、新都市計画法施行。上記新産業都市のうち、4市14町6村による岡山県南広域都市計画区域が誕生(県広告第331条)。現在の岡山県南広域都市計画区域は、4市8町2村から構成されている。

 

土地利用

1.都市計画区域

人口の増加や社会の発達によって放置すると市民の生活、経済活動に悪影響が生じる可能性がある地域において土地利用の規制・誘導、都市環境の整備、また自然や緑地を積極的にたもつために指定される。(原則として都道府県が指定。しかし、あらかじめ国土交通大臣と協議し、その同意を得なければならない。)

   倉敷市は現在島しょ部を除く全域29588haが、都市計画区域に指定されている。つまり倉敷市全域が、市に管理されているといえる。しかし、全国的にみると、全市町村の約60%が都市計画区域に指定されているに過ぎない。倉敷市はかなり管理された市だといえる。乱開発から市民の生活を守るという点においてこれは良いことである。

2.市街化区域・市街化調整区域

土地利用に関する計画の基本として、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、都市計画区域を二分して、市街化区域と市街化調整区域を定める。

   市街化区域・・・すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

   市街化調整区域・・・市街化を抑制すべき区域

市街地がスプロール(拡散)するのを防ぐため、市街化区域の回りを市街化調整区域が取り囲むのが普通。

全国的に、実際、都市計画区域全域の約27%が線引きされているに過ぎない。ということは、まだ都市計画区域内であるにも関わらず、市街化するかしないかが決定されていない土地が73%も残っているということになる。市街化するかどうか決まらないことには、他の計画も進まないのではないか。進んだとしても、以下に記す様な弊害が起こる。早めに手を打つべきだ。

市街化区域、市街化調整区域を定めないと起こる弊害

           都市の過密化、郊外への無秩序なスプロール、道路や下水道などの都市基盤整理がなされてない市街地の発生、公共施設整備に対する効率の悪い投資・追随的な投資

    倉敷市は昭和46年9月7日に区分(いわゆる線引き)が行われた。

 

    開発当時の横浜は、乱雑な開発の防止の為に、調整区域を25%にした。これは、当時横浜市企画調整局長の田村明氏が意見し決まったことなのだが、もしも彼が言わなければ、当時の県の考えや開発圧力からみて、90%は市街化区域になっていたという。本当は彼は55%だけを市街化区域にしたかったという。全体からみて適当な場所であり、計画的できちんと都市施設整備が保障される所だけを市街化する方がいいと考えたのである。このことから分かるように、調整区域をつくることによって守られるものは多い。計画的でない市街化は、様々な悪影響を市民に及ぼすかもしれないのだ。

3.地域地区

都市内の土地の利用に計画性を与え、適正な制限のもとに土地の合理的利用をはかるため、都市計画域内の土地をどのような用途にどの程度利用するのかを決める都市計画として地域地区という制度がある。これには、12種類の用途地域に加え、特別工業地区、高度利用地区、防火地域、準防火地域、風致地区などがある。

 

12種類の用途地域のイメージ

・第一種低層住居専用地域・・・低層住宅の良好な環境を守るための地域。小規模なお店や事務所をかねた住宅や小中学校などが建てられる。

・第二種低層住居専用地域・・・主に低層住宅の良好な環境を守るための地域。小  中学校などのほか、150uまでの一定のお店などが建てられる。

・第一種中高層住居専用地域・・・中高層住宅の良好な環境を守るための地域。病院、大学、500uまでの一定のお店などが建てられる。

・第二種中高層住居専用地域・・・主に中高層住宅の良好な環境を守るための地域。病院、大学などのほか、1500uまでの一定のお店や事務所などが建てられる。

・第一種住居地域・・・住居の環境を守るための地域。3000uまでの店舗、事務所、ホテルなどは建てられる。

・第二種住宅地域・・・主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、パチンコ屋、カラオケボックスなどは建てられる。

・準住居地域・・・道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域。

・近隣商業地域・・・近隣の住民が日用品の買い物をする店舗などの業務の利便の増進を図る地域。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられる。

・商業地域・・・銀行、映画館、飲食店、百貨店、事務所など商業などの業務や利便の増進を図る地域。住宅や小規模の工場も建てられる。

・準工業地域・・・主に軽工業の工場などの環境悪化の恐れのない工業の業務の利便を図る地域。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられる。

・工業地域・・・主として工場の業務の利便の増進を図る地域で、どんな工場でも建てらる。住宅やお店は建てられるが、学校、病院、ホテルなどは建てられない。

     工業専用地域・・・専ら工業の業務の利便の増進を図る地域。どんな工場でも建てられるが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられない。

                            以上12種

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     高度地区・・・1.用途地域内にある。

         2.市街地の環境維持、または土地利用の増進を図るため。

         3.建築物の高さの「最高限度」「最低限度」を定める。 

3の理由・・・高い建物による環境の悪化や、低い建物による土地利用増進の妨害を防ぐため。

 

  ・特定地区・・・1.市街地の整備改善を図る目的で街区に整備または造成(土地ならし)が行われる地区に限定する。

          2.制限〜A..容積率 B.建築物の高さの最高限度 C.壁面の位置

      (例:新宿副都心・池袋サンシャインシティ)   

     防火地域・準防火地域・・・市街地における火災の危険を防止するために決め                                                       られる地域。主に木造建築物を規制する。防火地域では原則として耐火建築物に、準防火地域では原則として耐火建築物または簡易耐火建築物にしなければならない。この地域内での建築は、建築基準法によって細かく規制されている。(都計法第9条17項)商業地域内では防火地域、近隣商業地域内においては準防火地域に指定される。  しかし、伝統的建築物群保存地区内においては、伝統的町並みを保存していくために近隣商業地帯にも関わらず、準防火地域の        指定をしない。

     美観地区と風致地区・・・美観地区=市街地の美観を維持するため

            風致地区=都市の風致を維持するため

                  (都計法第9条第18.19条)

 風致とは何か?

「風致」とは、おもむき・味わい・風趣

「風致地区」とは、自然の美しさを維持する目的で都市計画区域内で特に指定された地区(現代国語例解辞典 小学館)

 つまり、風致地区は自然の美しさ、美観地区は人工の美しさを維持保護する地区なのである。

 

倉敷美観地区の年間観光客数は328万7千人で、241万人である倉敷チボリ公園を大きく上回っている。(2001年度「岡山県観光客動態調査」)県で一番の観光スポットだ。美観地区に指定した甲斐がある。ところで、財政は潤っているのだろうか。

歳入・・・142.569百万円

       内訳 市税 53.3%

          諸収入 12.8%

          繰入金 7.4%

          使用料及び手数料分担金及び負担金  3.1%

          財産収入・寄付金 1.1%

          地方贈与税 2.5%

          市債6.2%

          県支出金 2.3%

その他 2.7%

          

 

   歳出・・・142.569百万円

         内訳 民生費 19.4%

            土木費 21.0%

            教育費 15.6%

            衛生費 13.5%

            総務費 9.2%

 

            公債費 4.9%

            商工費 3.7%

            農林水産業費 4.4%

            諸支出費 3.9%

            その他 4.4%        (平成4年度一般会計当初予算)

 

歳入の半分以上は、市税で成り立っている。一方、歳出で一番お金をかけているのは土木費である。5分の1を占めている。街をあるくと、道などの工事がやたら目に付く。倉敷がどうかは別として必要な工事を必要な分だけやって、県支出金を増やすための土木工事はやらないことは最低限のマナーである。

 

 

・倉敷とチボリ公園

上記の資料は、平成4年度のものだが、倉敷は平成9年に倉敷チボリ公園をオープンした。客数は年々減少し、今では赤字になっているという。テーマパークは莫大な制作費・維持費を必要とするので、大変だ。黒字になっているテーマパークは、ディズニーランドともう一個くらいで、あとは全て、赤字らしい。お客集めの効果があるので一見いいように見えて、かなりの儲けがないと黒字にならない。結局、大切なのは、正確な集客見込みをたてて、それが本当に期待できるか予想し、できないようならやめることだと思う。もちろんやってみなければ分からない、という言い方もできる。しかし、そこをいかに真実に近い見込みをたてられるかが市の腕力のみせどころなのだと私は思う。

 

・まとめ

今回、倉敷について、土地利用の側面から都市計画を見てきた。都市計画において、土地利用、つまり、どの様に土地をりようするのが市民にとってベストかを考えることは基本中の基本だ。普段、我々が気にせず生活しているその地も、都市計画区域に指定されている可能性は多いにある。市民もそのことをもっと認識し、市町村に意見するという努力が必要だということを強く感じた。市民が意見し、市民がつくっていく都市、という意識が一般的に欠けているように思う。また、都市計画を行っている側にたいしては、市街化区域と市街化調整区域の線引きが難しいが、それをもっと考えるべきだと思う。都会化すればいいというものではない。無理な都会化は前述のとうり様々な弊害をもたらす。それは結局都市の崩壊につながる。まだ線引きがされていない都市は、早めに行い、また、もうされた都市はもう一度見直してみる必要があると思う。

 

 

     参考文献

   「宅建 法令上の制限編」   久保輝幸

   「倉敷の都市計画」      倉敷市

   「夢・倉敷」      倉敷市

   「統計でみる岡山のすがた 2001」 岡山県統計協会

   「都市ヨコハマをつくる」   田村明