資源産出国の問題点

早川奈央子

 

1.はじめに

 

「世界の多くの国が多民族国家であるにもかかわらず、これまで、世界は国家を単位としてとらえることが多かった。しかし、現実には各国内に異なる民族の異なる主張が存在している。冷戦が終結して、国家という枠組みの中で様々な民族が自己主張を始め、民族間同士の摩擦、または民族と国家との間での摩擦が表面化している。また、民族紛争、民族問題というものは、それぞれ固有の背景があり、一般化はできないと言われている。個別の地域や国と民族とが複雑に絡み合っている。」(『民族紛争・民族問題の総合的理解をめざして世界民族問題辞典発刊記念』から引用・石毛直道・1995年・Vol. No.10 NIRA政策研究所)

 昨年の米国同時テロ以降、民族の自己主張によるイデオロギーの闘争が注目されている。だが、上記の文中にあるように、民族紛争、民族問題は、それぞれ固有の背景があり、一般化できない。確かに、イデオロギーの紛争は数多くあり、それぞれが、個別の思想、宗教などと密接に関係があり、共通項は見出しにくい。そこで私は、イデオロギーという精神部分のものではなく、物質的な資源をめぐっての紛争やその原因、問題点に着目してみた。すると、国や産出物が違ってもある程度の共通性が見出すことができた。そして、資源産出国の紛争の原因やなぜ途上国から脱することができないかなどの問題点や解決策を検討した。

 

2.資源産出国が抱える問題点

 

自然資源の豊富な国は、資源がほとんど採取できない日本から見るとうらやましく思える。なぜなら、自然資源を採掘し、他国に売ることにより、国自体の財政が潤い、経済も発展し、人々は豊かで安定した生活を営めるように思えるからだ。

だが、実際に産出国の現実は、産出国の人々は、豊かで安定した生活を営んでいるとは言えない。そして、その原因を探ると、必ずしも資源産出国側の問題だけでなく、それを採掘している国側も、産出国の人々を間接的に苦しめているという問題点が垣間見えた。また、これらの問題は、程度の差こそあれ、資源産出国に共通して見られるということも特徴である。

下記に資源産出国が抱える主な問題点と実際の国の例を挙げてみる。

 

@貧富の格差が拡大する

自然資源を主要な歳入としている社会では、汚職が広がり、貧富の格差が拡大し、政府機関は適正に機能せず国民に公共サービスを提供することができない、といった文化を発達させやすい。

 

A紛争が起こりやすい

資源が採れる地域の統治権を巡って争いが起こりやすい。また、資源が、戦争の資金源となるために、紛争がなかなか終わらない。そして、国の中の統治権を1度に握った者は、

 その既得権益を手放そうとはしない。その結果、その国では独裁政権に陥りやすくなってしまう。

そして、教育や医療にお金をかけることが、蔑ろにされ、軍備にお金をかけることが優先される。

 

B資源による利益が国全体に行き渡らない

資源採取産業は、資源を加工せずに輸出する場合は、地域経済との関連が少なく「飛び地」化しやすい。そのために、地域経済全体へ還元される利益もまた限られたものになってしまう。

 (例えば、鉱山や伐採対象となる森林は、多くが遠隔地にあるため、地理的にもまさに「飛び地」と言える。)

 

C経済発展を妨げる

  以前は、資源産出場所の周りに産業が興り始め、経済の発展を助けた。例えば、日本の炭鉱採掘場所の周りに産業が興り、経済の発展を助けたのは周知である。

だが、現代の資源産出国を見てみると、経済の発展を妨げていると言える。一つには、

昨今よく耳にするグローバル化の「落ちこぼれ」の問題が考えられる。「落ちこぼれ」とは、国際競争に追いつくことができない途上国を指している。採掘側である先進国は、物や食料を生産するための、高い技術や効率の良い手法を持っている。そして、先進国側は、資源を購入したための資金を回収するために、産出側の途上国に、自国内の安価で生産できる物を売りつけて、財政の整合性を計ろうとする。そのため、結果的に途上国の収入源は、自然資源に依存してしまう。そして、国際競争に追いつけない農業、製造業、サービス産業などに力を入れることを自然と怠ってしまう。そうなると、職種も限られてしまうために、経済の発展を妨げると言える。

また、資源に過剰に依存しすぎると、資源の市場価値の上下によって、その国の経済は好況と不況に大きく左右される。そのために、多くの人は、安定した生活を営めないという問題点も挙げられる。

 

 では、実際の国の例で見てみると、アンゴラは石油やダイヤモンドなどの豊富な資源に恵まれている。しかし、4世紀半にもわたる激しい内戦のために経済は破壊され、全人口の3分の1の400万人近くが国内難民と化して、100万人ほどが外国の食料援助に依存し続けている。人口の大半が悲惨な生活環境と恐怖のなかで暮らす一方、反政府勢力アンゴラ全面独立民族同盟と政府の指導者たちは、どちらもアンゴラの自然資源を売却して得た資金で武器を購入して、私腹を肥やしている。そして、戦争を始める際には大きかったイデオロギーの主張もいつの間にか失われ、資源から生まれた闘争と汚職が内戦継続の動機となっている。だが、その傍らで、アンゴラの子供たちの30%は6歳になる前に命を落としている。

 コロンビアでは、石油が最大の輸出産品だが、大多数の人がその恩恵を受けておらず、石油プロジェクトへの抗議行動は、軍隊によって抑圧されている。

スーダンは、1980年に石油が発見された後、政府が和平を破棄、83年に内戦が再開して以降、200万人以上が死亡し、100万人が難民になり、450万人が立ち退かされた。99年に始まった石油輸出が現在も紛争を拡大させている。石油収入は武器購入に使われ、軍事支出を3倍にするのに貢献している。石油産業の道路と滑走路は軍隊に用いられている。南部の石油の豊富な地域の人口を減らすために、政府は村々を爆撃し、収穫物を徹底的に荒し、家畜を略奪し、各党派に武器を提供することで部族間の戦闘状態を助長している。反対派の軍は石油施設を攻撃目標にしている。一方、市民の生活はどうかというと、成人識字率54%、女子の中等教育の比率は16%、5歳未満死亡率12%である。また、40%の人々が安全な水を享受できない状態だ。スーダンでは長期化する内戦、低迷する経済状況のため、政府の保健・医療サービスが十分ではなく、国民の栄養状況も悪化している。特に、子どもの生命が危機に晒されており、出生1000名における乳児死亡率は82、幼児死亡率は132と中東諸国の中でも最低の状態にある。

カンボジアは、サファイア、ルビー、木材が主な資源であり、1989年に中国からの援助が途絶えた後、クメール・ルージュ反政府軍は軍事行動の資金源を資源略奪に頼った。クメール・ルージュは領土内で採掘権と伐採権をタイの企業に売ることで、1990年代前半には、年間1億2000万から2億4000万ドルの収入を得ていた。しかし、95年以降は宝石の枯渇とタイ政府の木材貿易の制限により急減な収入減少に見舞われて、クメール・ルージュは弱体化した。カンボジア政府は1990年代半ばには、ベトナム人伐採業者へ木材伐採権を売る違法な密約協定を結び、毎年1億ドルを得ていた。しかし、森林破壊が広がるにつれて、収入は2000万ドルを切っている。一方、市民の実態はどうか。カンボジアの、識字率は35%(男性48%・女性22%)であることから、教育が行き届いてないことがわかる。また、1歳以下の乳幼児死亡の約40%は出産後1カ月以内に起こっており、これは母親の健康状態の悪さ、不適切な分娩・新生児のケア、母子保健サービスの欠如に起因している。カンボジアにおける乳幼児の健康状態は世界でも最も低い水準にあり、10人に1人が5歳になる前に死亡しており、その数は年間55,000人以上にのぼる。その原因は下痢、急性呼吸器感染症の他、破傷風・麻疹等のワクチンで予防可能な感染症である。
 また、深刻な栄養不足がこれらの病気の蔓延や死亡率の高さにつながっており、特にビタミンA、鉄分、ヨード等の微量栄養素の不足が深刻である。

以上の例から、先に述べた@からCの事柄が、資源産出国の主な問題点であると言えよう。

 

3.資源産出国を苦しめている先進国

 

上記の2のCで挙げたように、資源を採掘する側、また買い取る側である先進国が、間接的に途上国の発展の妨げになっており、資源産出国を苦しめている。また、先進国が資源を購入することによって、紛争の資金源という間接的な形で、産出国の利権をめぐる争いに間接的に援助しているという問題も挙げられる。

また、先進国の資源採掘際の資源開発自体が紛争の原因になる場合が数多くある。先進国が、資源採掘場所の地域住民、それも先住民族と紛争を引き起こしたり、緊張状態を招いている。下記に先進国の資源開発と資源採掘場所の住民との関係が、詳しく書かれている文章を挙げてみる。

「資源開発の企業は、運営のため一般的には適切な補償なしに地域住民から土地を没収している。また飲料水を汚染し、農業用地を破壊し、狩猟と漁業の場を破壊することで環境問題も引き起こしている。そして、多くの建設労働者や採鉱および伐採労働者を、その地域に集めることで社会的な混乱を引き起こしている。以前は、アクセスできなかった土地に道路が建設されたことにより、「早い者勝ち」状況を招き、外部のならず者がやってくる。これらの環境と社会の混乱は現実には当該地域にもたらされるのであるが、資源開発による経済的利益のほとんどは中央政府、多国籍企業と外国人投資家といった外部の者が受け取る。しかも、悪影響を受ける地域社会が抵抗をすれば、しばしば政府から激しい弾圧を受けることになる。

紛争の多くは、人々の不満やイデオロギーの闘争をはじめとしているが、だいたいが超大国をはじめとする外部の資金援助を得る形で始まっている。そしてその争いが、石油や鉱物、金属、宝石の原石、木材といった資源の略奪によって継続している。また自然資源に魅せられた団体は、政府的抑制や少数派の利権侵害などの未解決の不満のためだと主張しているが、実は違法な採取で儲けるつもりの犯罪的な起業家グループが資源に群がっている。彼らは政府を転覆させるためではなく、多くは貧困国における希少な資源の支配権を獲得、維持するために暴力を行使し始める。そして貧困、抑圧的な政治、崩壊する公共サービス、発展の見通しも雇用創出力も失った経済、深刻な社会分裂などにより、国の統治力が弱まっていることに乗じて資源の支配権を得ている場合が多い。」(『地球白書』クリストファー・フレイヴィン・ワールドウォッチ研究所・2002年・第7章)

また、先進国の国際的大企業の中には、実際に次のような方法で資源をめぐる紛争の継続を実質的に支持しているケースもある。

@     デ・ビアス社がダイヤモンドを最近まで購入していたように、戦闘当事者から商品を購入することによって。

A     石油企業シェブロン社、エルフ社が、アンゴラで行っていたように、戦時中の政府に収入をもたらすことによって。

B     サベナ社がコンゴのタンタル鉱石を欧州へと空輸していたように、不法取引された原料搬出を助けることによって。

これらの企業行動は必ずしもすべてが犯罪であるとは限らない。例えば、アンゴラでは

石油企業は国際社会から承認された政府と契約を結んでいる。しかし、その国にそうした

企業が存在すること自体が、国民の大多数が暴力と生活必需品の欠乏とに苦しんでいる状況を維持し続ける役割を果たしていると言える。このことから、私たち先進国にも資源紛争の責任はあると言える。私たち先進国の企業は、利益追求のみばかりでなく、産出国の無力な住民のことも考えるべきと言える。

 

 

4.水という資源

 

 また、現在の私たちには、軽視しがちな、水という資源をめぐっても争いが増えていくのではないだろうか。実際に、水はお金に換算できる資源ではないので、戦争の資金源とはならないが、既に公正な配分をめぐって争いが起こっている。

 

 

5.現状の水資源の実態

 

日本にいるとあまりイメージが浮かばないが、世界全体で考えると、過去半世紀の間に、世界人口と食料需要は二倍以上に増え、河川の汚染が急速に進んだため、飲料水や農業用の水を地下水から頼るようになった。

しかし、それと同時に、地下水も、農場・工場・都市近くでは汚染されていることがわかってきた。さらには、地下に蓄えられた水は、地表にある水よりも汚染に対して弱いということがわかり始めている。(地下水は、非常にゆっくり地下水を移動するので、汚染物質が貯留しやすい。)今日の世界の水需要を調べて見ると、現代では、あらゆる大陸の地下水から大量の水が汲み上げられており、世界全体で15億から20億人が地下水を飲料水の主要供給源にしている。中国東部の華北平原の地下にある地下水層だけでも、およそ1億6000万人に飲料水を供給している。発展途上国世界の大都市のいくつかダッカ、ジャカルタ、リマ、メキシコシティなどは、水需要を地下水に依存している。上水道が整備されていない農村部では、地下水が飲料水の唯一の供給源であることが多い。アメリカでは地方在住者のほぼ99%、インドでは地方在住者の80%が飲料水を地下水に依存している。」以上の資料からもわかるように、地下水は人にとって重要な資源と言える。また、私たちの食糧の約40%が潅漑農地から生み出されている。そこでも地下水を頼っている。インド、パキスタン、中国の華北平原、アメリカ西部など、世界有数の食糧生産地域で地下水が汲み上げられているが、そのほとんどの地域で、自然が補給する以上のペースで地下水を利用している。このままでは、水不足は時間の問題である。水不足が世界の食糧生産にとって最大の脅威になってしまうと言えよう。

だが、問題は地下水だけでなく、地表の水にも問題が出始めている。既にアメリカでは、河川によって維持されていた湿地や湖が乾き始めた例がでてきた。そのため、野性動物保護の問題がではじめ、自然環境へ水を再配分することが実行されはじめた。現在、太平洋側北西部のスネーク川下流にある四つのダムを破壊するアイディアが検討されている。

 このような水の問題は食糧生産の問題と絡み、その国だけでなく、世界全体へ影響を与えることになる。長く食糧安定保障論の視野の外に置かれていた水資源だが、今後は紛争の対象に十分なると思われる。

 

 

6.今後の水をめぐる紛争の可能性

 

 水をめぐる紛争が起こるだろうと言われる地域の具体例を挙げると世界に5箇所ある。@アラル海地域、Aガンジス川、Bヨルダン川、Cナイル川、Dユーフラテス川である。これら5箇所の流域諸国の人口が2025年までに45%から78%増加すると予想されている。これらの国で、農業用水と都市用水の間で限られた水供給量をめぐって争いがますます激化すると言われている。詳細は次のようだ。

 @かつて世界で4番目に大きな湖であったアラル海地域は、1960年代に、そこに水を注ぐアムダリア川とシルダリア川から、膨大な量の灌漑用水を取水したため、今やその3分の1の大きさとなってしまった。アムダリア川の上流にはアフガニスタンが、下流にはトルクメニスタン、ウズベキスタンなどの国があり、アフガニスタン復興に際しては、それらの国々を巻き込んでさらに大きな水問題となる危険がある。

 Aインダス川はインド・パキスタンの紛争地・カシミールにも流れている。かつてこの水利用をめぐって紛争が起こり、以来毎年水管理計画についての話し合いを両国で行っているが、今後カシミールを巡る紛争が新たな火種となる可能性もある。

 Bヨルダン川は、度重なる中東戦争によって、戦勝国であるイスラエルの住民13万人がヨルダン川の80%を使い、200万人のパレスチナ人が20%を使うという、水をめぐる「力の不均衡」が存在し、それによって経済的不平等も引き起こす原因となっている。

 Cユーフラテス川は、川の上流にあるトルコが相次いでダムを建設し、ユーフラテス川の水位が下がっている。さらに、トルコが水量の約半分を使う大規模な国土開発を計画しており、それに対して、シリアが平等利用を訴えている。川の上流に位置するトルコが貯水量480億トンのダムを建設し、そのおかげでトルコの小麦生産量は3倍に伸び、輸出も増加した。一方、下流に位置するシリアは、小麦生産量が今までの半分に減り、水を売る業者まで出てきた。結果として、毎秒500トンという流量に関する協定をめぐって対立するようになった。

 Dまた、ナイル川は、エジプト、スーダン、エチオピアの3カ国間に、ナイル川利用をめぐって争いが発生したが、2000年以降ナイル川の共同利用についての話し合いがもたれ、平和と安定に向けた流域の保全と管理の協働へと歩み寄りが始まっている。

だが、現在、この資源問題について大きく取り沙汰されているように思えない。しかし今後は、水を含め資源をめぐる争いは、国際社会の中で重視されるようになるだろう。

 

 

7.資源をめぐる紛争解決や脱途上国に向けて

 

 ここで、資源をめぐる紛争の予防または解決すればよいか、そして途上国をいかにすれば、経済発展していけるかを考察してみた。本来は豊かな恵みである自然資源が略奪の対象となって、結局はその国を破壊状態にしてしまうということは是非とも避けたい。また、紛争は人々の生活が脅かされるだけでなく、本来なら教育や医療などの向上に使われる財源が軍備に向かうことで、その国や地域の発展の可能性を制限してしまうという怖れもある。しかし、残念ながらこれといった紛争予防や解決の方法はないように思うが、考えられるものとして次の4つを挙げてみた。

 

@     国を民主化にする。

なぜ、国を民主化する方が良いのか、下記の文章に民主主義と経済成長の関連性を挙げた。

「なぜ、民主主義と経済成長の間に肯定的な関係が期待されなければならないのか、ま

た、なぜ、より豊かな国は、より民主的である可能性が高いと言えるのだろうか。一部

の研究者は、民主主義国が非民主主義国よりも財産権をきちんと保証しており、財産権 

を守り、契約を履行することは、投資と成長のために不可欠であると主張する。民主主義国はまた、改革によって損害を被る集団の支持も得やすいから、経済改革を実施し強化することにも優れているように思われる。しかし、民主主義は、成長にとって害であるという議論もあり、上述の点については、コンセンサスはほとんど得られていない。独裁者の場合は、利己的な圧力団体からの圧力を意に介することは少なく、もし彼らが国の福祉に集中的に取り組むとすれば、福祉向上にもより成果を上げることができる、という主張を取り上げてみよう。」(『UNDPガバナンスと人間開発』・国際協力出版・2002年3月・第2章BOX4)

上記の文では、独裁者でも、場合によっては、人々のためになる可能性も主張しているが、世界を見てみると、圧倒的に豊かな国は民主主義国家であるし、独裁政治の政策が社会的に無力な者たちに主眼点を置いているようには見えない。なので、民主化にすべきであると思われる。そして、そのためには、先進国が民主化促進の手助けをするべきである。

 

A     公正な司法制度を促進する。

 次に司法制度と貧困な人々についての関わりを如実に示している文を挙げてみる。

 「司法制度は、多くの場合、貧しい人々に対して犯された犯罪よりも、貧しい人々が犯

 した犯罪を訴追することに、より熱心であるようだ。(中略)貧困者を対象にした調査

 によると、警察や司法組織は、せいぜいよくても何も対応してくれない存在と見なされ

 ており、最悪の場合は司法権を乱暴に濫用する者と見なされていることがわかる。」

 (『UNDPガバナンスと人間開発』・国際協力出版・2002年3月・第3章BOX1)

 これは、@の民主化に国自体がなった後に、促進するほうが、望ましいと思える。

なぜなら、民主化の元、公正な司法制度が成り立つからだ。

 

B     人々に幅広い職業を普及させるために、教育の充実や専門知識を育成する機関の設立等。

機関の設立の際には先進国が援助すべきであり、最終的には、途上国自身が自力で経済

発展していけるようにすべきである。特に教育は、民主化の土台となるような内容にするべきである。

 

C     企業が途上国に進出する際の規制を設ける。

人間が既得権益をなかなか手放せないことは、日本の官僚の天下り問題を見ても周知の事実である。このように、先進国の企業自身自らが、一部の利益を削って規制を設けるのということは考えにくい。やはり、国際協定で規制を設け、多国間同士で監視し運営していくことが最善策と思われる。

 

以上のように@からCの紛争予防策は、必ずしも決定的なものと言えない。だが、少しでも予防や解決策としての可能性が高いとするならば、今まで資源の恩恵を与っていた先進国が、途上国に促し、金銭的または人的支援をすべきである。

 

 

8.人口減少政策

 

 また、資源紛争を避ける解決法として、資源を消費する人口そのものを減らす対策も考えるべきである。人口急増の背景には、近代医学や予防医学の進歩が挙げられる。帝王切開をはじめとする出産に関する医学と抗生物質の発見と進歩は、妊婦と乳幼児死亡率を大幅に減少させた。また、自然災害に対しても、耐火耐震性の鉄筋コンクリートの家屋が建設されることによってずいぶん被害を減少できるようになった。そして、産業革命以前の国力は、人間の「馬力」の力が基本単位となっていたことはよく言われることだが、そのような時代背景のために「生めよ、増やせよ」のような風潮がさらに煽りを加えたのだと考えられる。このように世界の人口増加は、産業革命後に始まった。しかし、当時の人口増加はヨーロッパに限られ、また、新大陸アメリカへの移住という解決方法があった。ところが、第二次大戦後の人口増加は、発展途上国で特に著しく、ここ2030年の増加は、「人口爆発」と呼ばれるほどである。下記に、参考資料として、世界の人口の推移と予測の資料を挙げた。

 

 

人口について考える時、先に述べたように発展途上国で人口が爆発的に急増していることが特徴である。このままでは、水や食料や資源をめぐる大規模な紛争が起こる可能性がますます増えるだろう。したがって、人口をいかに抑制するかは、私たちにとって重大な問題である。では、発展途上国の人口増加を抑制するにはどうしたらよいか。まず、日本を例にとって考えてみようと思う。日本も戦前は、兄弟が4、5人というのが典型的家族であった。当時日本は過剰人口対策として、満州や南米移住策として奨励されていた。ところが、終戦によって、海外にいた同胞が帰国を余儀なくされたため、人口問題と食糧自給問題は深刻さを増した。しかし、現在はむしろ出生率の減少が問題になった。なぜ、そのようになったのか。この裏には、女性の就学の機会が戦前に比べて、著しく増加したことが挙げられる。また、小中学校で男女平等の思想が一般化した。そして、それに伴い女性の就労の機会が増大した。そして、女性が社会進出したことにより、女性の「自己の尊厳」と「主体性」を自覚させ、子供をたくさん産み、育てること以外にも重きを置くようになったと考えられる。また、自分自身が教育を受けたことにより、自分の子供にもきちんとした教育を受けさせたいと考えるようになり、教育にもお金を十分に配分できるようにと、子供の人数が少なくなっていったという理由も考えられる。したがって、女性の教育の普及とそれに伴った社会進出が、人口抑制の第一歩だと言える。先進国は、発展途上国に対し、女性の教育普及のための支援も重要視すべきである。そして、人口増加に歯止めをかけることによって、資源をめぐっての争いが、これ以上大規模化しないようにしていくべきである。

 

 

9.まとめ

 

資源をめぐる問題を調べていくうちに、資源の一部特権階級や政府の独占のために、または、資源をめぐる紛争のために、しわ寄せが、女性や子供、貧しい人など社会的に弱い者へきていることが浮き彫りになった。また、「お金は特権階級へ流れ、環境破壊の影響などの重荷は貧しい人々へと貧富の格差がますます広がる。」と、いう悪循環が続いていることも資源紛争の特徴である。これは、早急に解決しなくてはならない問題であり、私たち先進国は、「社会的弱者」を焦点にあてた支援をもっと考察すべきだと実感した。また、資源の採掘にかかわる先進国企業のモラルのあり方にも問題があり、それを私たちは見て見ぬふりをしていた傾向がある。これは、先進国の一員として最も反省すべき点であると言える。だが、最近は環境サミットなどでも課題の一つとして採り上げられている「持続可能な開発」が重要視されるようになってきた。つまり、利益ばかり追求する風潮が徐々にかわりつつある兆しが出てきたということだ。今後は、環境問題だけでなく、資源を保有している国への開発や援助のあり方に対しても、世界的なサミットが開かれることを望む。

 

参考文献一覧

 

・『民族紛争・民族問題の総合的理解をめざして世界民族問題辞典発刊記念』・石毛直道・

NIRA政策研究所・1995年

・『地球白書』クリストファー・フレイヴィン・ワールドウォッチ研究所・2002年

・『UNDPガバナンスと人間開発』・国際協力出版・2002年

・『データ世界経済・東京大学出版・奥村茂次・柳田侃・清水貞俊・森田桐郎・1990年